コロナパンデミックでも、芋畑は、以前と変わらず四季が溢れていました。そんな中を歩き回り、目に留まったのが動物達に食べられた芋でした。何でもない光景なのですが、不思議に感じました。「動物達は、何の基準で、どんな好みで、この芋を選んだのか?」そもそも昆虫や動物達に味覚はあるのか?ふいに不思議さに包まれました。気が付くと芋畑の中には生態系が広がっていました。それはサツマイモを中心とした生態系です。サツマイモの美味しさを求めて、微生物、昆虫、鳥、動物、そして私達・・・沢山のいきものが群がっているのです。それは芋を大好物としているいきものばかり。
味とは、本来、こういう風に生態系を繋いでいく役割なのではないか?
芋は食べられるために美味しくなり、動物達は芋を食べながら別の場所に運び、そこでまた生息していく。味とは、生態系を繋ぎ美味しさとは生態系全体から育まれていくものなのではないか?
そう感じてから、私達は厨房の中だけで味を作るのは辞めました。厨房の中で仕入れた食材を混ぜ合わせて味を作る事から、厨房の外に飛び出して大自然の中で味を育む。私達の本当の菓子作りは、ここから始まったのです。
ラグジュアリーとは何か?を追い求め、辿り着いたのは故郷の大地が作る美味しさでした。